小中学校給食費の無償化を求める請願書に対する思い
食は私たちの体を作っている、といっても反対する人はいないと思います。学校給食は、子どもたちにとって、一日3食のうちの一食を担っている大切なものです。成長期の子どもにとって、心身の健全な発達のためには、安心安全な食材で作られることが必須です。
更に学校給食法では、生活の基本となる食事食文化を伝える大切な教育活動の一環であるとしており、食を通して様々な学びを深める教育の面があります。
大和市の学校給食は、市独自の品質基準を設け、値段だけでなく、品質や味、添加物の少ない食品を選び、原則国内産のもの、遺伝子組み換えがされていないものを選定し、手作りにこだわるなどの工夫がされています。
一方、私たちを取り巻く食環境は、輸入食材の増加、遺伝子組み換え表示の厳格化による実質非表示やゲノム編集食品の非表示、農薬や化学肥料の使用など、安全性への不安が増大している状態です。輸入食材の中で多く使用されている北米産の小麦からは、有機表示のものを除き、アメリカ産は約98%、カナダ産は100%、グリホサートという除草剤が残留農薬として検出されてます。
大和市の学校給食では、米、小麦、牛乳は神奈川県から購入していますが、小麦はカナダ産のものが使用されています。一方で残留農薬の問題を重要視し、農薬が検出されない国内産小麦を食材費を助成して使用する自治体も出てきています。
子どもの体を作る大切な一食である給食の食の安全を担保していく為には、「疑わしきは使用せず」予防原則の姿勢で臨むべきです。給食は、現在保護者がほとんどを負担している食材費の他に、給食を作るための人件費や光熱費、設備費等かなりの費用がかかります。しかし、最低限必要な経費を確保した上で、今後無償化だけを求めていけば、食材の質を落として経費を節減することになる可能性もゼロではありません。給食費の無償化を求めるのであれば、食材の質の確保を、法律もしくは条例などで決めておくことが必須です。今治市 食と農のまちづくり条例や、木更津市オーガニックなまちづくり条例などが例として挙げられます。
給食費が保護者にとって大きな負担となっていること、コロナ化を経て物価高や光熱費の高騰など、経済的に困難な家庭が増加し、給食費がますます負担となっている声もきかれます。大和市は、昨年から今年も、物価高高騰による食材費の高騰分を市が負担することで給食費の値上げをせず、質や量を確保する努力が行われています。また、生活保護世帯と非課税世帯に対する給食費の補助や、第三子への給食費無料の制度があります。
小中学校の給食費を無償にするためには、市の試算では約9億8千万円が必要です。
その中で、真に子どもの貧困対策に取り組むのであれば、給食費補助対象の拡大や、長期休暇中の児童クラブ等への昼食提供、小中学校での朝食の提供、食材費の補助を拡大して質の向上(国内産小麦の使用やオーガニック農産物の使用、地産地消の拡大等)、栄養教諭や学校栄養職員の配置や増員など、まず取り組むべきことがあるのではないでしょうか。
限りある財源の中で、まず何を優先して取り組むべきなのかを考えてほしい。子どもが食す学校給食は、食の安全の確保と無償化は車の両輪として同時に進めていくべきです。
残念ながら、今回の請願書には食の安全を訴える文言がありませんでした。国に対する無償化の要望だけであれば、賛成としたかったところですが、市に対しても同じく無償化に向けた取り組みを要望する請願書であったため、文教市民経済常任委員会では反対、本会議では退席しました。